英語圏でのコミュニケーションではよく出てくる「sarcasm」というものをご存じですか?
日本の文化では伝わりにくいユーモアなので、一言で説明するのが難しいものではあります。
Sarcasmはよく「皮肉」と訳されますが、実際に皮肉の英訳を調べると「irony」がでてきます。
SarcasmとIronyは似ているようで実は意味が違うので、今回はSarcasmの意味と、Ironyとの違いを解説していこうと思います。
Sarcasmの意味
Sarcasmを一言で説明すると、確かに「皮肉」という意味になるのですが、もう少し深堀りして説明すると、「嫌味っぽく皮肉を言う」ような言動の事を指します。
なんだかしっくりこないかもしれないので、ここで例を交えて解説していきます。
以下のセリフは「Big Bang Theory(ビッグバンセオリー)」という海外ドラマに出てきたセリフです。
例①
「やあペニー!仕事はどうだった?」
ペニー:Great, I hope I’m a waitress from the Cheesecake factory for my whole life.
「最高よ。もう一生チーズケーキファクトリーでウェイトレスをしてたいわ」
シェルドン:Was that sarcasm?
「今のって皮肉?」
ペニーは女優になる夢を持っていますが、なかなか女優業が安定しないため、チーズケーキファクトリーでウェイトレスをしながら生計を立てています。
そんな彼女は「仕事はどうだった?」と聞かれ腹が立ったので「最高よ。ずっとウェイトレスとして働きたいわ」と嫌味っぽく言います。もちろんずっとウェイトレスとして働きたいわけではなく、嫌味っぽく皮肉を言っただけです。
このSarcasmには「今の仕事に満足してないのは見たらわかるでしょ。わざわざ聞いてこないでよ」という嫌味が込められているわけですね。
さらにもう一つBig Bang Theoryから例を紹介します。
少し長いですが、どうぞお付き合いください…。
例②
シェルドンはかなりの変わり者で、極度の潔癖症です。ある日、シェルドンは隣人のペニーの部屋がとてつもなく散らかっていることを知ってしまい、その部屋が気になりすぎて寝れなくなってしまいます。
不眠症で苦しむシェルドンは、なんとペニーの部屋に無断に入り、彼女の部屋の片づけをしてしまうのです。シェルドンのルームメイトであるレナードはシェルドンを止めましたが、シェルドンはいうことを聞きません。
以下が不法侵入事件の次の日の会話です。
シェルドン:I have to say I slept splendidly. Granted, not long, but just deeply and well.
「昨日はゆっくり眠れたよ。長くはないけど深い眠りだった」
レナード:I’m not surprised. A well-known folk cure for insomnia is to break in your neighbor’s apartment and clean.
「だろうな。不眠症に一番効く治療法は隣人の部屋に不法侵入して片付けることだからね」
シェルドン:Sarcasm?
「今のって皮肉?」
レナード:You think?
「そう思う?」
シェルドン:Granted, my methods may have been somewhat unorthodox but I think the end result will be a measurable enhancement to Penny’s quality of life.
「確かに僕のしたことは型破りな行動だったけど、結果的にペニーの生活の質を高めると思うんだ」
レナード:You convinced me, maybe tonight we should sneak in and shampoo her carpet.
「確かにそうだね。じゃあ今日はまた彼女の部屋に忍び込んでカーペットをシャンプーしてあげようよ」
シェルドン:You don’t think that crosses a line?
「それはさすがにやりすぎじゃないかな?」
レナード:Yes!! For god’s sake, Sheldon. Do I have to hold up a sarcasm sign every time I open my mouth?
「当たり前だろ!まったく…。俺は喋る度に皮肉を知らせるカードを掲げなきゃいけないのか?」
上記のセリフで黄色くマーキングしてあるものはすべてSarcasmです。
「だろうな。不眠症に一番効く治療法は隣人の部屋に不法侵入して片付けることだからね」
⇒人の部屋に勝手に入ることは非常識であることは一目瞭然なので、レナードは嫌味っぽくそれを指摘しています。
「今のって皮肉?」「そう思う?」
⇒今のが皮肉なのは当たり前だろ、というのをさらに嫌味っぽく言っています。
「確かにそうだね。じゃあ今日はまた彼女の部屋に忍び込んでカーペットをシャンプーしてあげようよ」
⇒明らかに非常識な行動を嫌味っぽく冗談で提案しています。
普通であればこの様に言われると嫌味を言われているんだな、とわかると思うのですが、シェルドンは変わり者でSarcasmを検知できないため、レナードの発言がSarcasmがどうか分からないというわけですね。
このように、Sarcasmは誰にでも通じるユーモアではないと覚えておいたほうがいいかもしれません。
SarcasmとIronyの違い
さて、Sarcasmの例も紹介したところで、次はIronyの例を見ていきましょう。
Bさん:What an irony.
「皮肉なものだね」
この様に、本来強盗を取り締まるべきである交番に、強盗が入ってしまった事そのものが「皮肉」になるわけです。IronyはSarcasmとは違って物事の矛盾そのものを指す言葉として使われています。
前述の通り、日本ではSarcasmという文化がないため伝わりにくいのと同じように、Sarcasmは誰にでも通じるユーモアではありません。Sarcasmの使いどころは気を付けましょう。
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